フィギュアを撮影する時の被写界深度とピントの合わせ方とについてまとめています。
被写界深度
被写界深度は、ピントがほぼ合ったように鮮明に見える範囲の広さです。
- F値を開く(小さくする)ほど被写界深度は浅くなる
- 撮影距離(被写体との距離)が短くなるほど被写界深度は浅くなる
- レンズの焦点距離が長くなるほど被写界深度は浅くなる
参考までに、下記の表は僕が使っているフルサイズ機に焦点距離90mmのマクロレンズで撮影した時の被写界深度です。
0.28mはレンズの撮影最短距離、1mは一般的なスケールフィギュアの全身が撮影できる距離です。
| F値 | 撮影距離0.28m | 撮影距離1m |
|---|---|---|
| F2.8 | 2mm | 23mm |
| F4 | 3mm | 33mm |
| F5.6 | 4mm | 46mm |
| F8 | 5mm | 66mm |
| F11 | 7mm | 91mm |
| F16 | 10mm | 132mm |
| F22 | 14mm | 182mm |
この表を参考にすると、フルサイズ機+焦点距離90mmのマクロレンズで、距離1mから被写体の奥行約50mmのセントルイス軽装Ver.の全身を撮影する時は、F値をF5.6~F8前後に設定すると全体にピントを合わせることができます。
被写界深度がイメージしづらい時は、レンズに対して平行な面を意識してみて下さい。

フィギュア撮影の様な近距離撮影では、被写界深度はピントを合わせた位置から前後にほぼ等しくなります。
但し、F値を絞れば(大きくすれば)ピントの合う範囲は広くなりますが、絞りすぎると画質の鮮明さが失われて、全体的にぼやけた印象になる回析現象が起きるので、絞りすぎにも注意が必要です。僕の撮影環境ではF16以上から少し気になります。

F値の設定が分からない時は、とりあえず一番綺麗に解像するF8~F11を基準に調整するのがおすすめです。
AFでピントを合わせる
AF(オートフォーカス)でピントを合わせる時は、フォーカスエリアをスポットモードに設定します。
メーカーによって名称は異なりますが、必ず狙ったエリアにピントを合わせられるモードを選択して下さい。カメラが勝手にピントの位置を決めるワイドモードやゾーンモードは厳禁です。大抵は前面のコントラストが強い部分にピントが合ってしまうからです。

例えば、F8で上の写真の胸付近の髪の毛にピントが合ってしまうと、本来ピントが合ってほしい瞳が少しボケてしまいます。

スマホサイズでは少し分かりにくいかもしれませんが、顔回りが少しもやっとしています。
この問題は、F値を絞る(大きくする)ことでも解決されますが、狙った位置にしっかりピントを合わせるだけで、F値を変更する必要がないケースは多々あります。また、被写体との距離が短くなる程、被写界深度が浅くなる&全体にピントを合わせるのが困難になるので、ピントの位置は明確に定めて下さい。主題がなければ、基本的に顔(手前の瞳)にピントを合わせるのが基本です。
とりあえずどこかにピントが合ってればいいや!といった感覚で撮影すると、間違いなく失敗します。
MFでピントを合わせる
MF(マニュアルフォーカス)でピントを合わせる時は、レンズのフォーカスリングを回して、撮影距離でピントの位置を調整します。
完全任意かつAFでは合わせられない位置にもピントを合わせられるのがMFのメリットです。
例えば、AFで手前の瞳にピントを合わせて、奥の瞳がボケてしまうようなケースでは、MFでピントの位置を少しだけ奥にずらしてあげると、F値を変えずに手前の瞳にも奥の瞳にもピントが合っている様に撮影できます。

瞳や特定の部位にピントを合わせるだけなら、AFのスポットモードで十分ですが、被写界深度の位置までコントロールしたいのであれば、MFが必要になってくるケースもあります。
但し、近距離撮影でのMFは、ミリ単位の調整をすることになるので、慣れるまでは操作が若干シビアです。三脚も必要になってきますし、やりすぎると本来ピントを合わせたいエリアのピントも甘くなってしまうので注意して下さい。
全身を撮影する時は、顔が台座の中心に位置しているフィギュアがほとんどなので、AFで顔にピントを合わせておけば違和感のない写真になるはずです。MFは必ずしも必要という訳ではありません。使わず撮影している方も多いと思います。
最後に
フィギュア撮影でピントを合わせる時は、下記のポイントを意識してみて下さい。
- AFで撮影する時はフォーカスエリアをスポットモードに設定する
- F値の設定が分からない時はF8~F11を基準に調整する
- 基本は顔(手前の瞳)にピントを合わせる
- 見せたいものがある時は主題にピントを合わせる
- 被写界深度(ピントの合う範囲)にも拘りたいならMFを使う
- F値を絞りすぎる(大きくしすぎる)と回析現象が起きるので注意
全体にピントを合わせたい時は、基本的にF値を絞る(大きくする)及び撮影距離を長くするしかありませんが、中望遠レンズの近距離撮影になると(上半身や顔のアップ等)、全体にピントを合わせて撮影することはできません。
F値をある程度絞っても被写界深度が足りないと感じるのであれば、ピントの位置をずらしてみる。離れて撮影してトリミングする。被写界深度合成を使う。といった方法も検討してみて下さい。また、ブログサイズで掲載する時は、本来ピントの甘かった部分にもピントが合っている様に見えるので、被写界深度は実際の数値よりも深く見えることが多々あります。
個人的には、どこにもピントが合っていない(手振れの可能性も)&どこにピントを合わせたいのか分からないケースを除いて、ピントを合わせたいエリアにしっかりピントが合っていれば問題ないと思っています。

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